冨田恵一の『ナイトフライ』の解説本といい、なぜか最近スティーリー・ダン関連の出版が相次ぎますが、今度はドナルド・フェイゲン自身がしたためた自伝的エッセイであります。
ドナルドは、どうせ一筋縄ではいかないクセ者に決まってますから楽しみに読んだんですけれど、いや〜、これは面白い!ほとんど抱腹絶倒とも言える内容です。
オタク系で暗くてモテなかった少年時代から、音楽にはまって生涯のパートナーであるウォルター・ベッカーに出会うまで。奥様のリビー・タイタスとのエピソードも泣かせます。もちろん、ジャズをはじめ彼がどんな分野の音楽に目覚め、どうやってスティーリー・ダンにたどり着いたのかも良く分かるようになっています。
なにしろドナルド・フェイゲンは筆が立つ!
さすがスティーリー・ダンのあれだけひねくれた文学的歌詞を作り上げた人物(ウォルターと共作)。その皮肉の効きまくったストーリー・テリングには飽きることがありません。
特に、ドラルド・フェイゲンがマイケル・マクドナルドとボズ・スキャッグスと一緒にやっているプロジェクト『デュークス・オブ・セプテンバー』のダイアリー。スティーリー・ダンと違って低予算でツアーしなければいけない過酷な珍道中が、面白おかしくかつアイロニーを込めて披露されていて絶品です。
例えば、日本についてもオモロい記述があります:「日本ではけっこうキツい思いをさせられる。なによりもまず、西洋人にとって、あそこは火星の遊園地のように見える場所だ。ピンボール・マシンのなかで、道を探しているような感じといってもいい。くわえてアメリカ人のミュージシャンには、殺人的な時差ボケと根本的に異なる文化とのコミュニケーションに苦しむ羽目になる。例えば、おそろしく堅苦しい礼儀作法、とりわけ外国人と接する際のそれは、多くの誤解を生み出している」ですって。ふふふでしょ?
スティーリー・ダンのファンに限らず、一流の音楽エッセイをお求めの方にはお勧めです!
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