バート・バカラック

1971_burt-bacharach_lp_front_1この4月には生誕85周年を飾る来日コンサートも予定され、まだまだお元気なバート・バカラック。

1971年の初来日の時、武道館まで観に行った筆者としては、まさに感無量であります。

「おしゃれですてきなバカラック」ということで、古今東西、内外ともにその雰囲気だけかすめ盗ろうとする連中が多々現れてきました。

でも、バカラックの本質はそのサウンド・スタイルにあるのではありません。

それは彼の『ハート』、すなわち『狂おしいまでにあふれ出るロマンチシズム』にこそあるんです。

「究極の胸キュン・サウンド」と言いましょうか・・・。

聴く者のロマンチックな心の琴線を鷲掴みにして離さない。そんな、あふれ出る彼の気持ちこそが、彼の魅力の神髄と言えるでしょう。

 

バカラックの曲造りは、親しみやすく聞こえますが非常に独特で、ほかの凡庸なイージー・リスニングとは完全に一線を画しています。

予測のつかないメロディー展開にあわせ、コード進行も分数コードから転調、さらに高度な和声まで自由自在。突然、曲の途中で拍子が変わるのも朝飯まえです。これはすべて、「頭の中で必然的に鳴っている音楽を忠実に表現」するから。彼の、古い形式にとらわれない精神のあらわれだと思います。

例えば、「アルフィー」。

バカラックが自ら最も好きな曲というだけあって、ここに彼の曲づくりのエッセンスが凝縮しています。

それでは、バカラック自身による紹介からどうぞご覧ください:

しっとりとしたバラードですが、とてつもなく難しいメロディー展開。小刻みに転調を繰り返し、ディミニッシュ・コードも巧みに使う洗練の極みとも言える和声。それでも多くのシンガーに愛され、今も歌い継がれる普遍性があるんです。

バート・バカラックはオーケストラの使い方や楽器編成も独特で、意外に薄いストリングスや、小粋なホーンの扱い、ギターによるパーカッシブな表現、電子オルガンの印象的な活用などなど、まさに「バカラック印」の意匠に満ちています。

そんなバート・バカラックのヒット曲は膨大です。

まずは、やっぱり「雨にぬれても/Raindrops Keep Fallin’ On My Head」でしょう。

名匠ジョージ・ロイヒル監督の「明日に向かって撃て!」の挿入歌。おしゃれな映画と楽曲の魅力がぴったりフィットし、4週連続全米1位とメガ・ヒットに。サントラともども、グラミー賞アカデミー賞の音楽部門を総なめにしました。

それでは、B.J.トーマスのヴォーカルによる「雨にぬれても」です:

バート・バカラックと作詞家のハル・デイヴィッドの強固なコンビに、歌で加わったのがディオンヌ・ワーウィック。この「トリオ」で数え切れないほどのヒット曲を放ち、共に成功の階段を上って行きました。

そんなディオンヌの歌唱から一曲だけ選ぶのは至難の技なのですが、この曲を選びましょう。カトリーヌ・ドヌーブ主演のロマンチックコメディ「幸せはパリで」の主題歌、「エイプリル・フールズ」。

ひたすらあふれ出るバート・バカラックのロマンチシズムと、それを忠実に歌い上げるディオンヌ・ワーウィックの歌唱に、ただ身を委ねて下さい:

さらにもう一曲といえば、ダスティ・スプリングフィールドの「恋のおもかげ/The Look Of Love」。

007/ジェームス・ボンドの番外編「カジノ・ロワイヤル」の主題歌。全米22位。これまたアカデミー「ベスト歌曲賞」受賞。バカラック/デイヴィッドの不滅の金字塔です。

 

さあ、皆さん一緒にご唱和願います。「バート・バカラックよ永遠なれ!」

 

⇒ バート・バカラックのアルバムを1枚だけ選ぶなんてとてもできませんが、標準盤のベストという意味ではここから:

 

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