『未来世紀ブラジル』や『12モンキーズ』などで著名なイギリス人監督テリー・ギリアムの最新作『ゼロの未来(原題:The Zero Theorem)』が、欧米から遅れること1年、日本でもようやく公開されました。
近未来の管理社会、一人の孤独なコンピューター技師が、それまで誰も解明できなかった公式「ゼロの定理」の解読を命じられ、人生の目的とは何かという大命題に迫る、というストーリー。クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』でアカデミー賞を受賞した異能の俳優クリストフ・ヴァルツが主演です。
予告編をご覧ください:
<以下、ネタバレ注意!>
近未来でSF的な設定ということで、テリー・ギリアム監督の『ブラジル』や『12モンキーズ』との類似を指摘する声が多く、これが「ブラジル3部作の最終章」とする意見もありますが、監督自身はそれを否定しています。ただ、そのどぎつい色彩感覚でゴトゴテに作り込んだような舞台設定は、明らかに「ブラジル」との共通点があると言えます。
さて、その出来栄えとしては、残念ながら「ブラジル」に遠く及ばないと言わざるを得ません。
アメリカの映画評価としてRotten Tomatoでは52%ということで、「まあまあ」の評価です(60%以上が高評価:こちらをご覧ください)
まず、制作費が10億円程度ということで、この種のSF映画としては予算上の制約がかなりあったと思われ、舞台装置のバラエティーや出演者の数など非常に限られています。結果として、どうも全体的に窮屈というか、同じような空間設定で、同じような密度の中を、ごく少人数の芝居が続くような印象で、想像力が大きく羽ばたきにくいなという感じがしました。
それと、「人間の生きる目的は何か?」「本当に、生きることに意味などないのか?」というテーマ設定自体がやや陳腐で、主人公の葛藤や結末のあっけなさ等を見ても、どうもドラマに今ひとつ入りこめません。やはり、さすがのテリー・ギリアム監督も70歳を超え、創作へのこだわりが薄まったんじゃないかという気がして、ちょっと残念です。
ただ、クリストフ・ヴァルツの演技はさすがなのと、紅一点のフラン人女優メラニー・ティエリーがとても魅力的なのが高得点でした。
それにしても、公開に1年以上も待たされるってのはどういうことなんでしょう?。そりゃ、海外でもヒットとは言えないし、超個性的で万人受しない映画なのは間違いないですけれど、テリー・ギリアム級の一流監督の最新作は、無条件で公開してもらいたいものです。
いずれにしても、テリー・ギリアム監督のファンはもとより、コアなSF作品を楽しみたい方にはお勧めです!
<→『ゼロの未来』を上映中の映画館(本日現在)はこちらです>
以下、テリー・ギリアム監督の製作映画を記します。
やはり、『ブラジル』を最高傑作として、『フィッシャー・キング』あたりまでが才能のピークでしょうか?2009年の『Dr.パルナサスの鏡』もなかなかユニークで、ギリアム監督以外ありえないような世界を楽しめました:
<テリー・ギリアム監督作品>
- モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル Monty Python and the Holy Grail (1975年)
- ジャバーウォッキー Jabberwocky (1977年)
- バンデットQ Time Bandits (1981年)
- クリムゾン 老人は荒野をめざす The Crimson Parmanent Assurance (1983年)
- 未来世紀ブラジル Brazil (1985年)
- バロン The Adventures of Baron Munchausen (1988年)
- フィッシャー・キングThe Fisher King (1991年)
- 12モンキーズ Twelve Monkeys (1996年)
- ラスベガスをやっつけろ Fear and Loathing in Las Vegas (1998年)
- ブラザーズ・グリム The Brothers Grimm (2005年)
- ローズ・イン・タイドランド Tideland (2005年)
- Dr.パルナサスの鏡 The Imaginarium of Doctor Parnassus (2009年)
- ドンキホーテを殺した男 The Man Who Killed Don Quixote (2011年)
- ゼロの未来 The Zero Theorem (2013年)
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