アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトらが創始したブラジル音楽の粋「ボサノバ」を、ひたすらポップに味付けし、世界中に広めて行ったのが、ゼルジオ・メンデスです。
今年73歳になるセルジオ・メンデスの音楽キャリアは恐ろしく長いです。
1960年台の初めから、みずからのバンドを結成し、アメリカをはじめ世界進出を目論みました。
1966年に結成したのが「セルジオ・メンデスとブラジル’66」。デビュー・アルバムから飛び出したのが「Mas Que Nada(マシュ・ケ・ナダ)」の世界的大ヒット。日本でもその名前が知られることになります。
それでは、まず「マシュ・ケ・ナダ」をお聞きください:
ドラムとベースのリズム・セクションに、セルジオ・メンデスの弾くピアノだけが唯一のメロディ楽器なのに、なぜこれほどゴージャスで躍動感あふれるパフォーマンスになるのでしょう。鍵は、二人の女性ボーカルと、それにからむセルジオ自身のコーラス。極めて洗練されたアレンジが光ります。
セルジオ・メンデスは「セルメン」の愛称で多くの日本のファンもゲット。何度も来日してくれました。
1970年の大阪万国博覧会での記念ステージはライブ・アルバムにもなりました。冒頭を飾るバカラック・ナンバーの「世界は愛を求めている」と「プリティ・ワールド」のメドレー。のちにA&Mレコードの社長ハーブ・アルパートと結婚するラニ・ホールの「コブシ」の効いたボーカルが、ステージをグイグイ引っぱって行きます。
セルメンがこれほど親しまれたのは、世界中のヒット・チューンを巧みにカバーして行ったから。特に、ビートルズ・ナンバーは何度も採り上げられましたが、特に有名なのがこの「フール・オン・ザ・ヒル」。もとからボサノバ・ナンバーだったんじゃないかと思わせるほどハマり切ったアレンジで、これまた世界中のヒット・チャートに登場したんです。
80年代に入り、さすがにやや息切れ気味になったセルジオ・メンデスですが、1983年にソロ名義で出したこの曲「愛をもう一度/Never Gonna let You Go」を、全米4位の大ヒットに叩き込みます。AORどまん中の曲づくりでアレンジャーとプロデューサーに徹し、まだまだやって行けるところを世界中に示したセルメンでした!
さて、2000年台になっても大ヒットを飛ばして世界を驚かせたのが「マシュ・ケ・ナダ」の新バージョン。あのブラック・アイド・ピーズと組み、ラップも入って大成功。ますます元気なセルメンです!
セルジオ・メンデスの長大なキャリアをカバーするのには、やっぱりベスト盤を聞くのがイイでしょう。
2011年にリリースされたこの2枚組み「アニヴァーサリー・ベスト」は、まさにセルメンのデビューから現在までのキャリアを過不足なくカバーし、出色の内容と言えます。機会があったら、ぜひ聞いてみて下さい。現在の私たちが聞いても、きっと心に響くものがあると思うんです。
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