トレヴァー・ホーンの名前をご存じなくても、彼がプロデュースした多数のアーティストの名前を聞けば、そのすごさをご納得いただけるでしょうか:
イエス、シール、マイク・オールドフィールド、ペット・ショップ・ボーイズ、ティナ・ターナー、トム・ジョーンズ、シェール、ポール・マッカートニー、ロッド・スチュワート、ブライアン・フェリー、アート・オブ・ノイズ、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、ABC、t.A.T.u.、プロバガンダ、グレイス・ジョーンズ、リサ・スタンズフィールド、などなど。
トレヴァー・ホーンがシーンで注目されたのは1979年、ジェフリー・ダウンズとのユニット「バグルス」で、エレクトリック・ポップのヒット・チューン『ラジオ・スターの悲劇』を生み出したころから。
ロボット・ボイスがポップな、とっても愛らしいチューン。トレヴァーの原点を知るには、やっぱりここからお聞きいただきたいです:
さてそして、トレヴァー・ホーンが1983年にプロデュースし、デヴューしたのが「アート・オブ・ノイズ」ですね。
当時最新鋭だったフェアライト・シンセサイザーでサンプリング・サウンドを大胆にフィーチャーした、「前衛的」なユニット。御大トム・ジョーンズにプリンスの「Kiss」を歌わせて大ヒットを飛ばしたり、これまた色々物議をかもしました:
1983年、トレヴァー・ホーンはイギリスのエレクトロ・ポップ・バンド「ABC」をプロデュースし、「ルック・オブ・ラブ」は全米18位のヒットに。さらに同年、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドによる「リラックス」は、全米10位の大ヒットになりました:
トレヴァー・ホーンのプロデュースの特徴は、「対象となる音楽を徹底的に磨き上げる」ということです。
コンピューター技術を駆使して造り込まれるそのサウンドは、極限まで洗練され、とてつもなくゴージャスな音響空間となって聞き手に迫ります。
あまりに造り込むので、時として「オーバー・プロデュース(やりすぎ)」と批判されることもありました。
確かに、彼のプロデュースは、アーティストの個性と自主性に任せるプロデュースの方法とは対極にあるといえます。アーティストは、時としてトレヴァー・ホーンと一体化し、あるいはトレヴァー・ホーンの道具と化したかのように感じられる時さえあります。
例えばシール。
従来のブラック・ミュージックにない洗練されたスタイルで、1995年にはグラミー賞も獲得しましたが、一体、どこまでがシール本人の才能で、どこからがトレヴァー・ホーンの手によるものか、判然としないところもあります。まさに「一体化」!
例えば、1991年のシールのデビュー・アルバムより、『ワイルド』をお聞きください:
1983年、トレヴァー・ホーンは一時イエスに加入したこともあり、脱退してから、プロデューサーとして手掛けたアルバム『90125』も特大のヒットに。
シングル・カットされた『ロンリー・ハート』は、イエスにとって初の全米ナンバー・ワンに輝きます。
サンプラーによるオケ・ヒットを大胆に使い、タイトなリズムに、イエスらしいプログレ風味とポップなアレンジが共存。今聞いても、トレヴァー・ホーンの職人芸にホレボレします:
さて、アート・オブ・ノイズが1999年、トレヴァー・ホーンのプロデュースの元に再結成され、発表したのが『ドビュッシーの誘惑』です。
ドビュッシーはいうまでもなく、19世紀のフランスが生んだ偉大な作曲家で、「月の光」や「亜麻色の髪の乙女」など超有名ですね。そのドビュッシーの代表的メロディーをモチーフに、現代的な音響技術の粋をつくして再構成したのが、この作品です。
アン・ダドリーほかアート・オブ・ノイズの旧メンバーに加え、元10ccのロル・クレームも参加。トレヴァー・ホーンはプロデューサーとして全体の指揮をとるとともに、あらゆる技術を駆使してサウンド全体を作り上げます。
アンビエント・ミュージックとしても、あるいはシリアスな実験音楽としても、聴き手の好みによって自在な世界が広がる野心作。クラッシック・ファンにもポップ・ファンにもぜひ聴いていただきたいです:
最後に、ロシアのお騒がせデュオ「t.A.T.u.」もご記憶にあるでしょうか?。モスクワ・オリンピックでも、ロシアを代表する国際的スターとして堂々と登場した、あのt.A.T.u.をプロデュースしたのもトレヴァー・ホーンだったんですねー。
あらためてお聞き下さい!:
もうキリがなくなって来ました。
最後に、トレヴァー・ホーンの広大なキャリアをまとめて楽しんでいただくには、2004年にトレヴァーのデビュー25周年を記念して開催されたコンサートのDVDをご覧いただくのが一番でしょう。ぜひご覧ください!:
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