10ccの4人は、きっちり二人づつに分かれていました。
グレアム・グールドマンとエリック・スチュワートの二人は、正統派のポップスを手掛け、10ccを長らく維持し続けて行きました。全英1位、全米2位の大ヒット曲『アイム・ノット・イン・ラヴ』を生んだのは、まさにこの二人です。
一方、ケヴィン・ゴドレイとロル・クレームの二人は、単なるバンド活動に収まらず、「ギズモ」なるギターアタッチメント(?)の開発販売を手掛けたり、かなり脱線気味でした。1976年、共に脱退し「ゴドレイ&クレーム」を結成して以降も、有名ミュージシャンのミュージック・ビデオを手掛けたりと実に多芸です。ロル・クレームがのちに、あの「変態音楽集団」アート・オブ・ノイズに加入したことも話題になりました。
その二人の曲作りも実に個性的でした。
凝りに凝った構成や、皮肉なメッセージに満ちた曲など、一筋縄ではいかない魅力にあふれるものばかり。
久我は、それをとっても愛したのであります・・・。
1975年に発売されたアルバム『オリジナル・サウンドトラック』の冒頭を飾る『パリの一夜 Une Nuit a Paris』こそ、その白眉でしょう:
これ以上ないほどの複雑な構成。ウィットに飛んだ歌詞とハーモニーで8分を超える大作。まさに「ロック・オペラ」と呼べる内容でしょう。
クイーンのあの「ボヘミアン・ラプソディ」に影響を与えたも言われていますが、久我としてはそこはどうでもいいです(どちらも1975年の作で、確かに10ccの方が少し早いけど、クイーンが参考にしたってのはどうかな。まあ、一番大きな類似点をあげるとすると、両者の「分厚いコーラス」の部分でしょうか)。
そして、なにより素晴らしいのはケヴィン・ゴドレイのリード・ヴォーカル。
本職のドラムはたいしたことないけど、なんとも素敵なクルーナー・ヴォイス。久我的には「大好きなヴォーカリストのトップ10」に入れてもいいぐらいです。
さて、ほかにも「ゴドレイ&クレーム」の個性満載の曲はたくさんあります。
翌年のアルバム『びっくり電話(How Dare You!)』から(しかし、なんちゅう邦題のセンスや・・・)。最後を飾る「電話を切らないで (Don’t Hang Up)』:
別れた奧さんに電話をかけて、「ずっと愛していたんだよ」なんて、なぜか未練たっぷりに。男性の思いはどんどん膨らんで、夢と妄想が勝手に飛翔するファンタジー。「ね、電話は切らないで・・・」。
それでも、最後は一方的に切られてしまうという。あまりにも切ない・・・。
10ccを脱退した後も、ゴドレイ&クレームの革新的な創作は続きます。
とにかくものすごかったのは、1977年の『ギズモ・ファンタジア(Consequences)』。LP3枚組の上、豪華ボックス、20ページブックレット付きというあまりに豪華な仕様で、二人が開発した「ギズモ」をとことんフィーチャーするという大ロック絵巻。はっきり言って、常人の理解を完全に超えておりました・・・。
そんな彼らが、唯一全米チャート入りさせたのがこの曲、『クライ』。ウェスタン調というか、なんともゆったりしたグルーブが気持ちよく、ケヴィン・ゴドレイのヴォーカルも絶好調。モーフィングを使ったミュージック・ビデオも話題になりましたね。
ということで、久我的には10ccというとゴドレイ&クレームなのですが、それじゃあんまり残りの二人に悪いので、一曲お届けいたします。『愛ゆえに (The Things We Do for Love) 』。
1977年、全米5位のヒット。やっぱりふつうに大名曲ですねー。
10ccよ永遠なれ!
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